大阪ガスの経常利益、1年で3倍動いた訳
大阪ガスの企業分析から持ち帰りたいのは、利益の増減を要因別に読み、継続取引が続く理由を確かめる視点です。数字が伸びた理由と、お客様に選ばれる理由。この二つを分けて捉えると、経営会議や営業活動で確認すべきことが具体的になります。
本記事では、2023年3月期から2024年3月期への変化を題材に、その考え方を整理します。直近決算の速報ではなく、既存の企業分析資料をもとに、仕組みを読み解く記事です。
利益が約3倍になっても、実力が3倍とは限らない
大阪ガスの連結経常利益は、2023年3月期の756億円から、2024年3月期には2,265億円へ増えました。増加率は199.5%、前年のおよそ3倍です。一方、売上高は前期比8.4%減でした。売上の伸びだけでは、この増益は説明できません。
同社の決算説明では、主な増益要因として、原料価格などが販売単価へ反映されるまでの時間差による影響と、前年度のフリーポートLNG液化基地の操業停止に伴う調達費用増加の反動などが挙げられています。複数の要因が重なった結果であり、全額を一つの理由に結び付けるのは適切ではありません。出典:大阪ガス・2024年3月期決算短信(表紙、2ページ)
原料費調整の仕組みには、仕入れ価格が動いてから販売単価に反映されるまでの時間差があります。そのため、コストと販売価格が同じ月に同じ方向へ動くとは限りません。
中小企業でも、仕入れ価格の変更日と、取引先との値上げ合意日がずれることがあります。月次利益が改善したときは、数量の増加、価格改定、原価の変化、一時的な費用の減少を分けて確認する。そうすれば、翌月以降も続く改善かどうかを判断しやすくなります。
継続売上を支える「選ばれる理由」を点検する
もう一つの論点は、お客様が取引を続ける理由です。
都市ガスの小売自由化は大口分野から段階的に進み、2017年4月には家庭向けを含む全面自由化が実施されました。「以前はすべての顧客が解約できなかった」という理解は正確ではありません。重要なのは、供給事業者を選べる範囲が広がったことです。出典:日本ガス協会・ガス小売全面自由化の経緯
大阪ガスは、全面自由化に合わせて料金メニューを追加し、住まいの駆けつけサービスなども発表しました。価格以外の接点を用意した事例として読むことができます。ただし、この施策がどの程度解約防止に寄与したかは、ここで確認した資料だけでは判断できません。出典:大阪ガス・2017年4月以降の料金メニューと新サービス
この変化から、法人営業への示唆を考えてみます。長年の取引先が発注を続けてくれる理由は、品質、納期、相談への対応、担当者との信頼など、さまざまです。「毎年注文がある」という事実だけでは、どれが決め手なのかは分かりません。
営業の役割は、受注履歴を残すことに加え、選ばれている理由を確かめ、次の提案へつなげることです。
最初に整えるのは、顧客ごとの一枚の記録
大規模なシステムを導入する前に、主要取引先ごとに次の項目を揃えてみてください。
| 記録する項目 | 確認すること |
|---|---|
| 選定理由 | お客様が評価している点。確認した相手と日付も残す |
| 未解決の困り事 | 見積の遅れ、納期回答、引き継ぎなど、実際に聞けた内容 |
| 次の接点 | 更新・発注時期、担当者変更、設備更新など |
| 次の行動 | 誰が、いつまでに、何を確認・提案するか |
| 採算の変化 | 売上だけでなく、粗利や対応工数がどう動いたか |
例えば「納期回答が早いから助かる」と聞けたなら、担当者の経験だけに頼らず、在庫・仕入先回答・社内確認の流れを整理します。選ばれる理由を、別の担当者でも提供できる仕事の手順へ変えるのです。
経営会議でも、売上順位だけで顧客を眺めるより、「価値を提供できているか」「追加対応で採算が崩れていないか」を併せて確認すると、営業と業務改善をつなげやすくなります。
生成AIは、記録の整理と確認漏れの発見に使う
ここからは大阪ガスの導入実績の説明ではなく、シーズコネクトからの実務上の提案です。
生成AIは、商談記録から困り事と次の行動を整理したり、前回との変化を抜き出したりする作業に活用できます。見積の前提条件を揃え、確認が必要な項目の候補を出す使い方も考えられます。
ただし、元の記録が個人の手帳、メール、表計算に分散し、顧客名や案件番号も揃っていなければ、正しくつなぎ合わせることは難しくなります。まず記録場所と入力項目を揃え、事実・担当者の見立て・未確認事項を区別することが先です。
AIがまとめた内容は担当者が確認します。価格や納期の確約、顧客への送信まで自動化する必要はありません。顧客情報を扱う場合は、社内で認められた環境と情報の範囲で運用します。
数字と施策を、そのまま自社に当てはめない
エネルギー事業には、調達、設備、制度に固有の条件があります。大阪ガスの財務構造やサービスをそのまま模倣するのではなく、利益の変動を分解する姿勢と、顧客接点の設計から学ぶことが大切です。
継続取引を守ろうとして、無料対応を増やしすぎることにも注意が必要です。お客様への価値が高くても、自社の対応工数や粗利が見えなければ、続けるほど負担が増える可能性があります。サービスの範囲と採算を、一緒に確認してください。
まずは主要顧客一社について、選ばれている理由と次の行動を整理する。その記録を営業と業務担当で共有し、実際の仕事が変わるか確かめる。そこが、持続可能な営業業務改革の出発点になります。
自社の営業と業務のつながりを整理したい方へ
シーズコネクトでは、見積・受注・納期回答・顧客情報の共有など、営業活動を支える業務の整理をご支援しています。
「取引は続いているが、選ばれる理由を説明できない」「担当者ごとに対応が違う」「AIを使いたいが、先に何を整えるべきか分からない」。こうした課題を、現在の業務の流れから一緒に整理します。
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本記事は公開資料をもとにした業務設計の考察です。企業の開示事実と、自社への応用に関する提案を分けて記載しています。
